禁酒よ、さらば

2005年3月17日
設備が段々と整ってゆく。
工場らしくなってきた。
小さくとも巨人となりうる工場である。
この調子なら今月中には立ち上がる。
これもスタッフ、関係者、そして、開発区の皆さんのおかげだ。

17時、仕事を終え、急ぎホテルへ戻り、準備にかかる。
今夜は私の会社が日頃お世話になっている開発区の皆さんをお迎えしての会食である。
会場は宿泊しているホテルの2階レストラン。
20名ほどが楽に入れる部屋を用意した。
当方の出席者は、J工場長と本社から出張してきている技術者のU氏、そして私の3名である。
先方はお役所らしく、出席者の選定にも気配りが必要で、部長クラスが2名、課長クラスが2名、係長クラスが2名、それにヒラの女性職員であるGさんと通訳が1名の8名。
例によって、予約もメニューも全て、このGさんに助けてもらった。

彼女のオーダーは実にすばらしい。
残すぐらいの量がもてなしの礼儀という中国で、決して恥ずかしくない量を、しかしよく見ると十分に食べながらバランスよく残る量をオーダーしている。
それも、地元の人にとっても日頃口に出来ないご馳走もしっかり入っているようだ。
出席されている人たちの箸の進み方が気持ちいい。

こういう人がウチの会社に来てくれたら最高なのだけど、そういう望みの持ち方はよくない。
お手盛り人事と無い物ねだり、さらに周囲の取引関係との溝を作る引き抜きに繋がる。
今契約中のコンサル会社のZさんがウチの会社に来たがっているとJ工場長経由で聞いた。
でも、それを引き抜くわけには行かない。
彼女が自分でその会社を辞めるまでは雇用条件のヒヤリングなどは絶対にしてはいけないことだ。

歓迎の辞、来賓の激励の言葉と、宴が進み、その間に何度も乾杯としたが、禁酒中の私は例によってお茶で応対し、J工場長もあまり酒に強くなく、その代わりに出張者のU氏が日本側の乾杯の責を一手に引き受けて孤軍奮闘してくれていた。
大柄で、実直な彼は、なかなかひょうきん者でもある。
ここ、中国で面識のある女性たちはこぞって彼のファンとなっている。
不思議な魅力のある人物だ。
J工場長は宴の世話係であり私の通訳も兼ねているので、大忙しである。
その彼も飲めない酒をがんばって飲んでいる。
ここでとんでもないことが起こった。

みんなには悪いと思っていたが、私から最も遠い席に着いているGさんが3度目の乾杯をしにやってきた。
なんと、手にはビールを持っている。
彼女は普段は全く酒類を飲まないと聞いている。
出席中のみんなが静まり返った。
J工場長が小声で言った、「総経理、飲まないわけにはいきませんね」
U氏、それに先方の通訳のYさんもそれを続けた。
そして、あの私を虜にしている彼女の笑顔である。
これ以上、可愛い娘からの、いや、気持ちのいい皆さん方の乾杯を受けないわけにはいかないだろう。
私は観念した。

空のコップを差し出し、彼女についでもらい、乾杯である。
きっちり飲み干し、相手にグラスの底を見せ、さらに頭上でひっくり返した。
久しぶりの酒である。
実に、9ヶ月ぶり。

大拍手が起きたのは言うまでもない。
その後、それなら俺のも受けろ、と言わんばかりに、次々と来るわ、来るわ・・・。
一度に大瓶2本分以上を飲まされた。
グラスが大きいのである。

J工場長は私が飲めないと思っているのか、しんどかったら飲まなくてもいいですよ、と何度も言ってきた。
しかし、元々飲兵衛である私はきっちり寝てる子を起こされた。
その後は、禁酒の理由さえ忘れてしまうがごとく、飲み続けた。
こうなると怖いものは何もない。
しかし、羽目ははずせない。
私はこの会社の責任者であり、皆さんとはよい関係を構築しなければならない。
そして、何よりも、ここは外国であり、私はパスポートホルダーなのである。

宴が終わり、日頃私が王菲の大ファンであることをきいている開発区の皆さんの要望で、カラオケに行った。
といっても、女性付きの風俗店ではなく、健全なカラオケボックスである。
中国には今、ビッグエコーを始め、カラオケボックスがあちこちに出来ており、地方都市でも成長著しいこの常熟でも何軒かあって、かなり流行っている。
設備もまあまあ整っている。
酒の酔いに背中を押されて、思いっきり歌ったのは言うまでもない。

今夜は中国に入国して以来の記念すべき夜となった。

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